FAQ 2ページ目
Q. 自由雲台にカメラを取り付ける向きはありますか?
A. あります。
この自由雲台のカメラ台は、おおむね長方形です。
カメラの底面や、レンズの三脚座もおおむね長方形です。
ですからカメラ台の長手方向と、
カメラの底面や三脚座の長手方向を合わせて取り付けてください。
カメラが安定して固定され、カメラブレもより少なくなります。
カメラを直接カメラ台に取り付けるときは |
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レンズの三脚座に取り付けるときは、 |
※右の写真は悪い取り付け方の例です。 カメラの安定性が若干悪くなりますし、 |
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Q. 自由雲台の締め付けつまみは、どのくらい締めればいいのですか?
A. 雲台はカメラが固定される程度にブレーキがきけばよいのです。
雲台の中にはつまみに大きな力を要求するように作られているものがあります。
すると手が痛くなるまで締め付けないとカメラが止まらないことになります。
梅本製作所の製品は使用する機材やカメラアングルによるのですが、
締め付けつまみを締め付け方向に回転していって軽く抵抗がかかり始まったところから、
角度にして60度から120度の間で固定されます。
すると手から与える力は、たいして必要ないことになります。
いわゆる「ばか締め」の必要はありません。
◆自由雲台の「丸形ノブ」について
上記のように「締め付けつまみ」は、
締め付け方向に回転していって軽く抵抗がかかり始まったところから、
角度にして60度から120度の間でカメラが固定されるように設計されています。
しかし、
「丸形ノブ」ではこの角度がわかりくいので一般に「締めすぎ」てしまう傾向があります。
( 「丸形ノブ」 を締め付ける時に思わず肘が上がってしまうようなら力が入りすぎています)
そこで簡単に「締め付けの目安」がわかる方法をご紹介します。
「丸型ノブ」に |
・三脚に自由雲台をセットしておきます。
(カメラはまだ取り付けないでください)
・「丸形ノブ」を軽く抵抗がかかり始まったところまで回しておきます。
・次に、「丸形ノブ」の側面に鉛筆などで「しるし」を付けます。
「しるし」は図で示すように時計の「12時の位置」が角度が見やすくてよいと思います。
(「しるし」は作業が終わったら消しゴムで簡単に消せます)
・ここで、いったん「丸形ノブ」をしっかり締め付けてから自由雲台に「お使いになるカメラ」を取り付けます。
・さて一度、
「普段のように」締め付けてみてください。かなりの角度まで締め付けていると思います。
(例えば、締め付け角度が60度でよい機材を、120度締め付けているようにです)
この角度をメモしておきましょう。
・今度はカメラアングルの固定の様子をみながら「丸形ノブ」を少しずつ締めていってください。(カメラを軽くゆすってカメラアングルの固定具合を確認します)
ご注意このときカメラの固定が不安定になっていますから必ずカメラを片手で支えたままで確認操作を行ってください。
・カメラアングルが固定されたら「しるし」を見ます。
最初の角度よりかなり小さくなっていると思います。この角度もメモしておきます。
そして、このときの「力加減」と「手首のスナップ」を覚えましょう。(意外に簡単です)
これで「丸形ノブ」の「締め付けの目安」が決まりました。
次からは、この「力加減」と「手首のスナップ」で締めればよいのです。
「丸形ノブ」の締め付け操作が、さらに楽になることと思います。
・ご注意 (フレーミングのズレについて)
締め付けつまみはカメラを固定するのに必要なだけ締めてください。
締め付けつまみを必要以上に締めるとフレーミングのズレの原因になることがあります。
2023年05月現在では
新型自由雲台Type-Sシリーズとなり、この締め付けつまみによるフレーミングのズレは極小になっています。
Q.梅本製作所の自由雲台は、パン操作ができますか?
A. 梅本製作所製の自由雲台には、
パン(カメラアングルの水平回転)のみを行なう機能があります。
特許取得済み
梅本製作所の自由雲台のブレーキ機構は次のように設計されています。
締め付けつまみを締めると、
まずはじめに自由雲台の本体内のボール部が固定され、
続いて自由雲台の底部の基台の回転が固定されます。
ですから締め付けつまみをいわゆる「半締め」状態にすると、
自由雲台の本体と底部の基台の間で、パン回転のみをさせる事ができます。
水平パンします ← | 締め付けつまみを半締めに | → 水平パンします |
実際の撮影では以下のようにします。
まずおおよそのカメラアングルを決め、
締め付けつまみを締めてカメラアングルを仮決めします。
次に水平にパンしたいときは、
締め付けつまみを少し緩めて「半締め」にします。
(このときカメラをもう片方の手でしっかりと支えてください)
適度な「半締め」にすると、
自由雲台の本体と底部の基台との間の固定がゆるまり
水平にパン操作ができるようになります。
このとき、カメラ・ボールは固定された状態を維持しています。
(ご注意:カメラ・ボールの固定力もある程度弱くなっています)
この状態で水平パンを行いカメラアングルを決定します。
そして締め付けつまみをしっかりと締めてカメラアングルの固定が完了します。
この締め付けつまみの「半締め」の具合は多少のコツは必要なのですが、
この操作に慣れていただくとごく自然にできるようになります。
特にわずかな角度のパン操作にはとても便利です。
この水平パン操作は、
2023年現在、梅本製作所ネットショップで販売している自由雲台ですべて行うことができます。
Q. 自由雲台にはどんなグリース(グリス)を使えばいいのですか?
A. 自由雲台のボール部のお手入れ方法には、
◆必ず「指定グリース」をお使いください。
指定グリース「梅本製作所自由雲台専用グリース(白)+(赤)」
お求めはこちら
※このお手入れ(グリースアップ)によって固定力が減少することはありません。
今までどおりの固定力を保ちつつ、
動きがなめらかになり、更に製品の寿命がとても長くなります。
詳細は下記の■自由雲台のグリス(グリース)についてへ
Q. 自由雲台のクッションコルクの清掃方法はどうしたらいいですか?
A. 梅本製作所製 自由雲台のクッションコルクの清掃方法に詳細を記載しました。
自由雲台を長く使っているとクッションコルクが黒っぽくテカってしまうことがあります。
すると、カメラ底部がクッションコルク上ですべる原因にもなりますし、
見栄えもよくありません。
このような現象が出たら、上記リンクで説明している「清掃」をしてみてください。
かなりキレイになり、摩擦力も相当程度回復するはずです。
コルクの剥がれ/砕けが始まっているものは、清掃の効果がでないことがあります。
Q. カメラ台の4つの黒丸(剛性体)は本当に効くのですか?
A. 以下の効果があります。
(製品特許を取得しています)
1. ミラーショックに起因するカメラブレの抑制
一眼レフカメラではミラーショックによるカメラブレが発生します。
このカメラブレは1/30〜1/15秒のシャッターで顕著になります。
カメラ台にゴムやコルク等の柔らかいクッションが貼ってあると、
カメラはクッションの上で自由に振動してしまいます。
(この振動は、クッションの下に付いている雲台や三脚とは無関係に発生します)
この振動は雲台や三脚では抑制できませんから、これがカメラブレの原因になります。
前記クッションはよじれる方向に大きく変形するために、
特に望遠レンズの三脚座を使って縦位置で撮影する場合このカメラブレは顕著に現れます。
このカメラブレは従来解決する手段がありませんでした。
ですから撮影のときに「あぶないシャッタースピードは使わない」という対策しかとれませんでした。
剛性体はゴムやコルク等のクッションに比べてはるかに硬いので、
カメラの底部と雲台のカメラ台をダイレクトに結合します。
ミラーショックによる振動は剛性の高いカメラ台によって直接押さえ込まれます。
その結果ミラーショックによるカメラブレを効果的に抑制します。
クッションに剛性体を配置したこの発明によって始めて解決することができました。
このことは、数千枚に及ぶテスト撮影によって確認されています。
テスト撮影のデータをお見せします。
剛性体の効果を確認するために、通常のSL-50ZS(FP-100ZSN写真右)と、比較用のSL-50ZS(FP-100ZSN)の剛性体なし(コルクのみ)を製作し(写真左)、テスト撮影をしました。
撮影データ
・カメラ ニコンD200
・レンズ AFニッコールED300ミリF4S
絞りF16 シャッター1/30秒 (ミラーアップなし)
・三脚 ベルボンカルマーニュ630U
・撮影距離 6m
・被写体 矢車チャート
剛性体の効果は、カメラを縦位置にしたときに、より顕著に現れます。
写真は縦位置でテスト撮影を行い、
その矢車チャートの要部を拡大したものです。
上の写真が 剛性体なし(コルクのみ)のもの
下の写真が 通常の(剛性体がある)ものの
テスト撮影の結果です。
この二つの写真の違いは、剛性体の有る/無しだけで生じています。
(自由雲台は、まったく同一のものです)
厚みが、わずか1mm程度のコルクなどのクッションで、
これだけのカメラブレが発生してしまうのは驚くべきことです。
そして、剛性体がレンズの三脚座に密着することによって、
カメラをしっかりと支持しコルクをたわませないので、
ミラーの反動による水平方向のカメラブレを抑制していることがわかります。
また、カメラブレは、カメラを操作する手や、屋外では風などもその原因になります。
剛性体はこれらが原因する振動も効果的に抑制します。
2. ゴムやコルク等のたわみに起因するカメラアングルのくるいの抑制
従来の雲台ではカメラアングルを決めた後、
カメラから手を離すとカメラアングルが狂ってしまうことがありました。
特に大きいレンズで撮影するときに顕著におこりました。
これはレンズの重みでクッションがたわんでしまうためにおこっていました。
また、特にカメラ台を90度たおして縦位置にした際に、
時間の経過とともに徐々にクッションがたわんでいくことによって、
カメラアングルが変化していく現象がありました。
これはクリープ現象といってゴムやコルク等のクッションに特有の性質であり、
従来の技術では解決できないものでした。
剛性体はゴムやコルク等のクッションに比べてはるかに硬いので、
カメラの底部と雲台のカメラ台をダイレクトに結合します。
したがってカメラから手を離したときのカメラアングルのくるいは発生しません。
また、前記のクリープ現象による時間の経過と共に発生するカメラアングルの変化もおこりません。
3. カメラネジのゆるみ止めの効果
撮影中にカメラは繰り返し操作されます。
その都度カメラには操作する手から力がかかります。
するとゴムやコルク等のクッションがよじれて、
カメラネジの軸周りにカメラが微小に回転してしまいカメラネジのゆるみを誘発していました。
剛性体はクッションのよじれを抑制するのでカメラネジのゆるみ止めの効果を発揮します。
上にも少し書いていますが「クッションは不要ではないか」という疑問に対するより専門的なお話をします。
物体はそれぞれの力学系において「固有振動数」を持っています。
クッションにも剛性体にもそれぞれの弾性係数と形状に応じた固有振動数があります。例えばクッションのみでカメラを支持した場合、上記1.のようにカメラのミラーショックの振動数とクッションの固有振動数が1/30秒程度で「合って」しまう(共振現象)ため、実写テストで現れた「二重写し」のようなカメラブレが現れました。
ではより硬い物質(剛性体)のみでカメラ台の上面を構成するとどうでしょうか。実はより高い固有振動数で共振し、ちょうど振動が跳ね返ったような特有のカメラブレを生じるのです。
「剛性体」の発明の本質は、
クッション部と剛性体の剛性(弾性係数)が相互に異なっているため、
クッション部がカメラを支えている力学系における固有振動数と、
剛性体がカメラを支えている力学系における固有振動数が互いに異なり、
一方の力学系で発生する固有振動を他方の力学系で相殺する効果を奏します。
このためカメラにミラーショック等の要因で力(振動)が加わった場合にも、
その力によって生じる揺れをクッション部と剛性体が相殺して速やかに収束させます。
ですから柔らかいクッションだけでカメラを支持した場合あるいは剛性体のような硬い物質のみで支持した場合のいずれよりも、
カメラブレが生じにくいという相乗効果を発揮するところにあるのです。
Q. 修理は直接引き受けてもらえますか?
A.弊社までメールにてご一報ください
旧モデル等で販社様で扱いがないときも弊社までご一報ください。
修理できる場合があります。
・梅本製作所ネットショップ
SL-ZSC Type−Sシリーズ,SL-AZD Type-Sシリーズ
SL−ZSC,SL−AZD,SL−AZシリーズ
クイックシュー SG−80
・CAPA 究極の高精度自由雲台 COG−ZSシリーズ
・フジヤカメラ特注 梅本製作所 自由雲台 SL−50ZS の
修理のお申し付け、
使用方法のお問い合わせなどのアフターサービスは梅本製作所へ直接お願いいたします。
また、「故障かな」と感じたときや、実際に修理に出される前に、
お手数ですが弊社あてメールにてご一報ください。
Q.3次元CADとは、CAEとは何ですか?
A. CAD(キャド)とはComputer Aided Design コンピュータ支援設計の略称です。
コンピュータを利用して、自動車や機械、建築物などの設計を行うシステムのことです。
CADには、2次元CAD(2D CAD)と、3次元CAD(3D CAD)があります。
2次元CADとは、 ちょうど手書きの文書から、ワープロに変わったのと同様です。ですから図面が読めない一般の方には、形状を理解することが非常に困難です。 |
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3次元CADは、2次元CADとはまったく異なり、コンピュータディスプレイ内のバーチャルな空間に、製品の立体形状を直接作成していきます。 この立体形状データのことをモデルといい、モデルを作る作業をモデリングといいます。 ですから、設計者以外の方でも、 また、3次元CADのデータは、次に説明するCAE(シーエーイー)のためのデータでもありますし、高速に見本品を作るラピッドプロトタイピングのデータとしても、さらに実際に製品を製作するCAM(キャム)(Computer Aided Manufacturing:コンピュータ支援製造)のデータにもなります。 |
CAE(シーエーイー)とは、Computer Aided Engineering コンピュータ支援エンジニアリングの略称です。
これまでは、設計の妥当性を評価するために、見本品を作って実物で実験を行なっていました。
CAEを使った設計では、CADモデルを利用してCAEで解析することにより、必要な強度・剛性・安全性・熱特性などのさまざまなテストを、試作品を作成する前にコンピュータ上で行うことができます。 CAEで解析できる主なものは以下のとおりです。 ・構造解析 ・機構解析 ・流体解析 |
画像は構造解析です |
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Q. アルマイト仕上げとは何ですか?
A. アルマイトとは金属の表面処理の一種で、アルミニウム(合金)を陽極とした電気化学的手法によって人工的に酸化皮膜を生成させることをいいます。
(これを陽極酸化処理といいます)
アルマイトはアルミニウム(合金)にしかできません。
生成させた酸化皮膜の厚さは条件によって異なるのですが一般に5〜20μm(ミクロン)程度のごく薄いものです。しかしその皮膜は非常に硬く、耐摩耗性にすぐれています。
アルマイト層の表面にはごく微細な孔が無数に存在します。この孔をふさぐ作業を封孔処理といいこれでアルマイト処理の作業は終了します。
染色ができることもアルマイトの特徴です。
たとえば「ブラック仕上げ」の場合は、封孔処理の前に黒色の染料に浸しアルマイト層の微細な孔の中に「黒」の染料を吸着させて染色します。その後封孔処理を行ないます。ですから染色の工程が入るだけでアルマイト層そのものは「無染色」のそれと同じものです。
(正確にいうと、しっかり着色するために「黒」のほうが若干膜が厚いです)
一方 「シルバー」はアルマイト処理をしただけで着色はしていません。ですから外観は「素材色」です。(正確にいうと「アルマイトの色」です)
アルマイトの「色・外観」と、塗装の「色・外観」の最大の違いは、
アルマイトは「色・外観」が金属光沢を残しているのに対し、
塗装は元の素材がなんであれ塗料そのものの色と外観になってしまうことです。
表面処理の方法としてもうひとつの代表的なものに「めっき」(メッキ・鍍金)があります。
めっきとは、ある素材の表面に別の金属の皮膜を析出させるものです。したがって外観は、
めっきの材質そのものの外観になります。
余談ですが、本来「アルマイト」は、1932年に日本で開発された陽極酸化処理の一手法に対して登録された商標名です。現在ではこれが普通名詞化してしまいアルミニウム(合金)に対して行なわれる陽極酸化処理のことを通称「アルマイト」と呼んでいます。
Q. 自由雲台の強度・剛性とは何ですか?
A. 機械などの「強さ」をあらわすには、「強度」と「剛性」の二つの概念があります。
そして強度と剛性とはそれぞれ別の意味を表します。
強度とは、簡単に言うと、
「そのもの(機械や材料)が壊れるまでに、どのくらいの力に耐えられるか」をあらわしています。
基本的には強度は高いほうが望ましいのです。
しかし強度とはそのものが壊れるまでにどれくらい変形するかとは無関係です。
だからそのもの(機械や材料)が大きく変形しても壊れなければある強度を持っていることになります。
剛性とは、簡単に言うと、
「そのもの(機械や材料)にある力を加えたときにどの程度しか変形しないか」
をあらわしています。
剛性が高いものはこの変形量が小さいのです。
つまり、強度とは
「そのものに対する力と破壊の関係」 をあらわしているのに対し、
剛性とは
「そのものに対する力と変形の関係」をあらわしているのです。
より詳しい説明は■強度と剛性とは ◆更に詳しい「剛性」の説明
では自由雲台の剛性が高いと何に効果が現れるのでしょうか。
剛性とは、力と変形の関係を表し、
「剛性が高い」とは、
力がかかったときの変形が少ない → 「たわみ」が少ないということです。
したがって自由雲台の剛性が高いと以下の効果があります。
・カメラブレを抑制できる
・「たわみ」によるカメラアングルの傾き(おじぎをすること)を極小にできる
梅本製作所の自由雲台は「高い剛性」で「軽量」なうえ「高い操作性」を兼ね備えています。自由雲台の「剛性が高い」ので、カメラの質量がかかったときの「たわみ」はとても小さく抑えられています。
したがって、「カメラブレ」,「カメラアングルの傾き(おじぎ)」ともに非常に小さく抑え込まれます。
それでは「自由雲台の剛性が低い」とどうなってしまうのでしょう。
・次項でそれを説明したいと思います。
Q. 自由雲台の剛性が低いと、どうなるのですか?
A. 自由雲台をお使いのユーザー様がしばしば経験されることがあります。
それは通称「カメラがおじぎをする」現象です。
典型的には自由雲台の締め付けノブを締めてからカメラを支えている手を離すとカメラアングルが少し傾いてしまう、という状態です。するとその傾きをあらかじめ計算に入れてカメラアングルを決めておかないといけないことになります。またこの傾きは特にカメラを縦位置にした時に大きくなります。カメラ+レンズの不均衡荷重がより多くかかっている方向に傾くので「カメラがおじぎをする」などと表現されることもあります。
この現象の原因は 「自由雲台の剛性不足による『たわみ』」 にあります。
自由雲台はカメラアングル変更のときにカメラを片手で支えるので、このときだけカメラ+レンズの不均衡荷重を手が支えています。カメラアングルを決定したのちカメラから手を離すと、カメラ+レンズの不均衡荷重が自由雲台に一気にかかります。すると剛性が不足した自由雲台では「たわみ」が目に見えるほど発生し「カメラがおじぎをしてしまう」のです。
これはしばしば自由雲台の固定力の不足が原因と誤解されることが多いのです。しかしもし固定力の不足が原因であれば「カメラアングルが少し傾いて止まる」とはならず、「止まらない」はずです。
多くの場合剛性の不足は自由雲台の設計に由来します。ある部分が「たわんでいる」というより全体の「たわみ」が積み重なってカメラアングルが傾くほどの「たわみ」になることが多いのです。
またカメラ台の滑り止めのクッションでも「たわみ」は発生します。つまり自由雲台の全体にわたって「高剛性設計思想」を徹底しないかぎり「自由雲台のたわみ」は問題になる可能性が高いのです。
さらに「たわみ」で「おじぎをする」ほど剛性が低い自由雲台ではカメラブレの危険性もまた大きくなります。自由雲台の剛性は極力大きく設計・製作しなければなりません。
さて、カメラ+レンズの不均衡荷重は雲台だけではなく、三脚にもかかります。
(クイックシューを使用しているときは、その剛性も関与してきます)
すると「雲台」がたわんでいるのか「三脚」がたわんでいるのかをはっきりさせなくてはなりません。
(ただし多くの場合、やはり雲台・クイックシューが疑わしいと思われます)
以下に原因箇所の特定のしかたを紹介します。
これを原因の切り分けといいます。
● もし3ウェイの丈夫な雲台をお持ちであれば、以下のことを実験してください。
(3ウェイ雲台の剛性が不足しているとこの実験はできません。実験には必ず評判の良い3ウェイ雲台を使用してください)
またクイックシューをお使いに場合も、切り分け実験をしてみてください。
・まず問題になっている自由雲台を三脚にセットし、固い床(フローリング)かコンクリートの上に「いつもの高さ」で立てます。
(このとき、じゅうたんのようなやわらかい床の上では、じゅうたんが「たわん」でしまうので実験になりません)
・この状態でカメラを載せて「たわみ」の量をカメラのファインダーで確認してください。特にカメラ縦位置の「たわみ」を良く見ておいてください。
クイックシューをお使いにときはクイックシューの有り、無しで「たわみ」の量を比較します。
・次に雲台を3ウェイに変更し上記と同じように立てて、カメラを載せます。
・ここで、ちょっとコツがあります。
(3ウェイの雲台はカメラ+レンズの不均衡荷重が常に雲台にかかっています。自由雲台ではアングル変更のときにカメラを片手で支えます。このときだけカメラ+レンズの不均衡荷重を手が支えていますから条件が違います)。
カメラを縦位置にします(たぶん撮影者から見て左側)。
つぎに縦位置のストップハンドルをゆるめます。このときにカメラを「片手で支え」ます。
(現在カメラは、縦位置方向にのみフリーに動きます)
片手でカメラを支えたまま縦位置のストップハンドルをもう片手の「指先でつまんで」締めていきます。(ハンドルでカメラ+レンズの不均衡荷重を支えてはいけません)
固定されたらカメラを支えている方の手を離してください。
このときの「たわみ」を、カメラのファインダーで確認してください。
もし自由雲台のときの「たわみ」のほうが大きければ、
それは自由雲台が原因で起こっている「たわみ」であると結論できます。
もし「たわみ」があまり変わらないようであれば「三脚」が原因である可能性が高いです。このときは三脚を変更しないとこの問題は解消しません。
またクイックシュー有りの「たわみ」が、無しより大きければそのクイックシューは「たわみ」が発生しています。
● それでは三脚の剛性も実験でチェックしてみましょう。
実験には三脚座付きの望遠レンズとカメラボディを使います。
・まず、三脚から雲台を外します。
(雲台の外し方は、上記の雲台のはずしかたの項を参照してください)
・次に三脚を固い床(フローリング)かコンクリートの上に「いつもの高さ」で立てます。
(このとき、じゅうたんのような、やわらかい床の上では、じゅうたんが「たわん」でしまうので実験になりません)
・三脚の雲台取り付けネジを、いわゆるセンターポールごと回しレンズの三脚座のネジ穴にねじこみます。つまり、三脚に望遠レンズ付きのカメラを雲台なしで直接取り付けてしまうのです。ですからいわゆるセンターポール(エレベーター)が自由に回転するタイプ(いわゆるラピットタイプの一部の三脚)ですとうまく取り付けることができます。ギヤ(歯車)で上下するタイプのようにセンターポールを回してネジをねじ込みのできない三脚ではこの実験はできません。
注:三脚と望遠レンズの三脚座がすきまなくきちんと付いていることを確認してください。三脚の雲台取り付けネジが長すぎる場合望遠レンズの三脚座のネジ穴に入りきれないことがあります。この場合この実験はできません。
あくまで実験ですのでカメラから離れないようにしてください。またこの状態での撮影はおすすめしません。
● 一部の望遠レンズの三脚座には剛性が十分とはいいがたいものがあります。その場合「三脚座の剛性不足」によってカメラ/レンズ系のふらつきが収まらない状態になってしまいます。そのような剛性の低い三脚座付き望遠レンズではこの実験はできません。
・この状態で、ファインダーを見ます。
レンズの先端のフード付近を指先で軽くちょんちょんと突いてみてください。
縦方向と横方向の両方でやります。
そのときの振動の大きさや振動の収まり具合をみます。
これがカメラから見たその三脚の剛性の目安です。
この実験でブレが大きいとか振動の収まりが悪いようであれば三脚のグレードアップをしたほうがよいでしょう。この剛性不足は雲台を変えても解消しません。
「たわみ」は剛性の不足で発生し剛性の不足は設計に由来します。
したがって「たわみ」が発生した三脚・雲台・クイックシューは、
あとからどこかの部分を改造しても剛性を向上させることは難しいのです。
ですから機材選びは慎重に行う必要があります。
Q. 振動吸収性のよい材料を使うと、カメラブレは減りますか?
A. まず「振動吸収」の意味をはっきりとさせましょう。
振動を吸収するとは、
・ 振動のエネルギーが物質の変位(変形)によって、
その物質の内部で熱エネルギーに変換されることをいいます。
熱エネルギーへの変換の原因は主にヒステリシスロスと呼ばれる物質(材料)の性質によります。このヒステリシスロスの大きな材料を「振動吸収性のよい材料」といっています。
振動がある物質に伝わるとその物質は振動に伴って変位→変形し、振動のエネルギーは熱エネルギーに変換されます。結果として振動の振幅(ゆれの幅)は時間と共に徐々に小さくなります。
つまり振動を吸収するためには「振動吸収性のよい材料」が変形する必要があります。また振動を吸収するには必ず一定の時間がかかります。
いまここに振動の発生側の「振動源(カメラなど)」を「支持体(三脚や雲台など)」で支えることを考えます。
「支持体(三脚や雲台など)」を振動吸収性のよい材料で作ったとします。
これだけでカメラブレは減るでしょうか?
上記の理由から明らかなように、振動を吸収するには「支持体(三脚や雲台など)」が変形せねばならず「支持体(三脚や雲台など)」の変形はカメラブレの原因です。
とくにカメラの場合、ミラーショックなどのパルス的な振動の発生の直後にシャッターが開くので振動を吸収している「時間」がないことが多いのです。
したがって振動吸収性のよい材料で「支持体(三脚や雲台など)」を作ったとしてもそれのみを原因としてカメラブレが減ることはないといえます。
同じ理由でカメラを載せる部分に防振ゴムなどを使ってもカメラブレ防止の効果は期待できません。
やはりカメラを高い剛性でガッチリと支えるのがカメラブレ防止の王道といえるでしょう。
剛性についてのより詳しい説明は
■強度と剛性とは ◆更に詳しい「剛性」の説明
Q. カメラネジ(雲台ネジ)とは、どんなネジなのですか?
A. JIS(日本工業規格)にカメラの三脚取付部として規定されています。通称カメラネジ(雲台ネジ)は基本的には普通のインチねじ(ユニファイねじ)です。
カメラネジとは
ボール部のお手入れには、以下の「指定グリース」をお使いください。
◆指定グリース
・「梅本製作所自由雲台専用グリース(白)+(赤)」 お求めはこちら
自由雲台のお手入れ方法で紹介しているようにボールへのグリース塗りは、ボールの表面に油分を与えるのと同時にボール表面の汚れを取るという役目があります。自由雲台のボールはとても汚れやすいのでボール表面のお手入れは欠かせないことです。
油性に優れ長期間に亘って性能を維持する
◆指定グリース
・「梅本製作所自由雲台専用グリース(白)+(赤)」 でお手入れをしてください。
長期間に亘って実験し決定した優れたグリースです。
グリースの中には特殊な用途(ラジコン模型、自転車、オートバイ、釣具等)に特化した物があります。それらはあまりにも種類が多すぎてすべてを実験することは事実上不可能なのでおすすめできません。
「オイル」 と 「グリース」 との違いは、以下のとおりです。
・常温で 液体 の潤滑剤が 「オイル (油)」
身近な例 : サラダ油
・常温で 半固体 の潤滑剤が 「グリース (脂)」
身近な例 : バター
グリースとオイルでは用途に違いがあります。
自由雲台のボール部の潤滑にはオイル(油)は適しません。
カメラねじについて説明します
ねじにはメートルねじ(寸法の基準がミリメートルであるもの例:M6 など)とユニファイねじ(寸法の基準がインチであるもの例:1/4‐20 UNCなど)があります。
カメラねじは
通称小ねじJIS 呼び1/4 は1/4−20 UNC を
通称大ねじJIS 呼び3/8 は3/8−16 UNC をそれぞれの基準にしています。
(JIS のカメラの三脚取付部では、めねじを少しガタ気味でもよいように規格しています)カメラネジを自作される方は上記の型番(ねじの呼びといいます)で工具やねじを入手されれば良いわけです。
ただしインチねじにはもうひとつの規格があり(通称英規格)ウイットねじ(例:W1/4−20 など)といいます。 これは旧規格で、JIS からは1968年に廃止されています。ところが主に建築関係でいまだに用いられているためホームセンター等でもこちらのウイットねじのみ流通しているのが現状です。
前記のユニファイねじとウイットねじの違いはねじ山の三角の角度です。 ユニファイねじ(メートルねじも同じ)が60°であるのに対し、ウイットねじは55°です。
そのため例えば、1/4−20 UNC のめねじにW1/4‐20 のおねじを入れれば入ってしまうのですが、ねじで一番大切なねじ山の角度が合っていませんのでカメラの取り付けにウイットねじを使うのはおすすめできません。
追記:ユニファイネジの既製品は上記のようにあまり流通していないのですがアンブラコ社製の物が入手できるかと思います。ねじ専門商社で扱っています。
● ご注意
カメラネジの規格を判断すると臨時の締結のみを想定していることがわかります。
更にカメラネジはそもそもネジに見合った十分な締め付けトルクをかけることができないという特殊な事情があります。
特にカメラボディのメネジ穴は、メネジをボディに固定している内部構造の強度が不足していることが多いので、ネジに見合った規定のトルクをかけて締め付けるとカメラボディのメネジ穴を破損する可能性も有ります。
◆もしカメラボディのカットモデルをご覧になる機会があれば、
【カメラボディの三脚用メネジ穴部品を固定している部分】にも注目してみてください。
いかにも小さな面積で三脚用メネジ穴部品が固定されています。
ですから三脚を使った撮影中はカメラから離れないようにしてください。
またカメラを三脚につけたまま三脚を担いで移動するのは絶対におやめください。
カメラが落下する危険があります。
雲台とカメラとの着脱を頻繁にされる方や、着脱が面倒な方には、
梅本製作所のクイックシューSG−80の使用を強くおすすめいたします。
強度と剛性について、たとえ話でわかりやすく説明してみます。
ここで飛行機の翼を考えてみましょう。
飛行機に乗っていて主翼を見ていると、飛行機が着陸しているときは主翼の先端が下側に垂れ下がっているのに対し、飛行中は上側に反り返ったようになっています。また気流が激しいときには主翼はバタバタと羽ばたくように動きます。このように主翼が変形しても翼が折れたりするようなことはありません。つまり飛行機の主翼は十分な強度を持っていることになります。
これを剛性の観点からみてみましょう。
主翼は飛行中に大きく変形するわけですから剛性が低いことがわかります。これは当然のことで、飛行機の翼が変形しても飛行にとってまったく問題ない以上、飛行するために軽量化を最優先して「変形しても絶対に壊れない」ように設計しているのです。
では三脚や雲台の場合はどうでしょうか。
もし、三脚の脚部のパイプが壊れないからといって撮影中に大きく変形するようであればカメラブレを引き起こす原因になってしまいます。ですから三脚や雲台は「力がかかっても変形を最小限にする」ように、つまり剛性を第一に設計すべきです。もちろん軽量化にも配慮することは当然のことです。
さて、「強度と剛性との間に関係があるか」について説明します。
非常に意外なことですが、先ほどの飛行機の例でもわかるように強度が高いということがそのまま剛性が高いということにはならないのです。
剛性に直接しかも大きく影響するのはその製品の形状(かたち)です(同じ種類の材料、例えばアルミ合金同士を使った場合)。
したがって剛性の高い形状に製品を設計するということが剛性を高める第一条件になるのです。
ごくおおざっぱに説明すると以上のようになります。
機械の「強さ」を表す概念として、「強度」と「剛性」があります。
そして「強度」と「剛性」は、まったく別の概念です。
(上記 「Q.自由雲台の強度・剛性とは何ですか?」をご参照ください。
剛性が重要な機械の代表例は工作機械(金属を削る機械)です。そして雲台も同様に剛性を重視すべきだと考えています。剛性が低いとブレますし使っていて「気持ち悪い」ものです(人の手は、すごいセンサーなのです)。
梅本製作所の自由雲台で感じられる「使いよさ」はこの高い剛性にも起因しています。
材料の「剛性」を表す用語の代表的なものに「縦弾性係数」があります。
これは、材料そのものがもつ固有の値です。
おもしろいことに、純粋な金属でもそれに他の金属を加えた「合金」でも縦弾性係数はあまり変わりません。ただし強度は大幅に変化します。
すると強度に余裕がある製品の場合(雲台がよい例)どのアルミ合金を使用しても形状が同じなら剛性はほぼ一定になります。
参考に、各種の金属の比重と、縦弾性係数をあげてみましょう。
鋼 | 比重7.8 | 縦弾性係数(kgf/mm^2)21000 | 比重1あたり2692 |
---|---|---|---|
純チタン | 比重4.5 | 縦弾性係数(kgf/mm^2)10430 | 比重1あたり2317 |
アルミニウム | 比重2.7 | 縦弾性係数(kgf/mm^2) 7050 | 比重1あたり2611 |
マグネシウム | 比重1.7 | 縦弾性係数(kgf/mm^2) 4570 | 比重1あたり2688 |
比重1あたり で見ると、各材料にほとんど差が無いことがわかります。
すると、同一形状のものでは、質量と剛性がほぼ比例します。
例えば、アルミニューム合金で300gの自由雲台を作ったとします。
同じ形状をマグネシウム合金で作ると、
質量は189gと63%に軽量化されますが、
肝心の「剛性」もアルミニューム合金の約65%に低下してしまいます。
つまり「軽量化はしたが、剛性不足」になる可能性が高いのです。
さて、機械の剛性を表す概念に、「断面二次モーメント」があります。断面二次モーメントとは「形状の持つ剛性特性」みたいなものです。また、断面二次モーメントは、曲げでは厚みの3乗に比例します。
すると、自由雲台の剛性を高めるには、
・縦弾性係数の高い材料を使用する
・断面二次モーメントの大きな形状に設計する
の二点がポイントになります。
さらに、軽量化に配慮するならば、
・比重の小さい材料を使用する
・断面二次モーメントに関係しない、余分な「肉」を取り除く
(肉盗み といいます)
を、すればよいことがわかります。
梅本製作所の自由雲台では、
・縦弾性係数と比重のバランスがよいアルミニューム合金を使用し
・断面二次モーメントが極力大きくなる形状とし
・余分な「肉」を、徹底的に取り除く (断面利用率を高める)
ことによって非常に高い剛性と徹底した軽量化を両立させています。
・さて、ではもっと小型軽量な自由雲台はできないのでしょうか。
過去に、XSL-30という試作モデルを製作して実験しました。
本体の直径がφ32mm ボールの直径がφ20mm、自由雲台底部の基台が無いものです。
この試作品の質量が124g。おそらくこれを基台付きにすると150g程度でしょう。
・写真左 試作 XSL-30 型自由雲台
・写真右 FP-90(SL-40クラス) 型自由雲台
大きさの違いをご覧ください。
ではなぜ製品化しなかったのか。
それは「ブレる」からです。
やはり「ある大きさと重さ」を持ったもの(カメラ)を支持するには、
「限界の大きさ」があることを痛感したものです。
ですから、
「(プロの)使用に耐えうる自由雲台」の大きさは、SL-40シリーズのクラスを「最小」と判断しています。
ひとつの製品には、けっこう膨大な「うしろだて」があるのです。
以上、梅本製作所の自由雲台設計の一端をお見せいたしました。
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